学会長挨拶 

 

テーマ「作業療法の進化と継続

 

 私は作業療法士の免許を取得してから現在まで、常に作業療法とは何か?我々は何のために働いているのか?自分は役に立っているのか?1年目からずっと自問自答してきた。それはつまり私自身の働く理由の探求であり、現在の自分自身のQOLにも繋がっている。今回、まだまだ未熟者であるにもかかわらず群馬県作業療法学会の学会長という大役を任され、本学会では学会テーマを「作業療法の進化と継続」と決めさせていただいた。実は、昨年学会を延期するまでは全く違うテーマで考えていたのだが、パンデミック下で激変する社会状況を目の当たりにして自然と現在のテーマに行き着いた。今回この場を借りて、学会テーマを決めた理由について少しお話させていただきたいと思う。

 

 皆さんは苦労して作業療法士免許を取得し、自分が希望した職場に就職して毎日臨床に励んでいます。臨床に邁進しながら自己の技術を磨き、次第に現場にも慣れてくると他医療職種との関係性や待遇面の不満を感じることも多くなり、転職や昇進を検討する時期が必ずやってきます。それはごく当たり前の思考・感覚であり、扶養家族や自身の生活の質を上げるために必要なプロセスです。しかしながら、新型コロナウイルスの感染拡大により病院の収益も低下し、最近の介護報酬改定や医療保険改定ではリハビリテーション職に対する風当たりはますます強くなるばかり。有資格者数も年々増加の一途を辿り、完全に需要と供給のバランスが崩れ始めていることが実感できます。

 

 皆さんはこのことにお気づきでしょうか?なんとなく知っているけど私には関係ない、協会がなんとかするだろう、職種としての仕事は何とかなるとお考えでしょうか?それぞれ、置かれる立場や環境も異なるため「自分はまだ大丈夫だろう」と考える方も多いかもしれませんが、その考え自体が認知バイアスの影響を受けていることもあり油断は禁物です。私の肌感覚では近い将来、作業療法士にも容赦なくリストラの嵐が吹き荒れる時期が来るだろうと考えています。新型コロナウイルスがパンデミックする前後で、ここまで世の中が変わってしまうことを予測できた方はどれほどいたでしょうか?

 

 昨今では、いつ何が起こるかわかりません。一般的な多くの職業と同様に作業療法士はサービス業であり、需要と供給のバランスがあって初めて成り立つ職業です。自分の技術に自信を持ち、安売りはできないとプライドを持つことも大切ですが、同程度の技術を持ちながらも謙虚に丁寧に患者さんに対応するセラピストが存在すれば、患者さんはそちらに流れます。すべては需要と供給のバランスにより成立し、需要が供給を上回れば作業療法士の給与も上がり、安定した職業としての地位を獲得することも可能です。有資格者が年々増加する現在において、我々作業療法士が取り組まなければならないことは、我々自身が社会から必要とされる存在となれるよう、作業療法の技術を進化させること、そしてその進化を継続することです。最近テレビで取り上げられてブームとなっているSDGsもしかり、これからは幅広い視野を持ちながら一般社会の常識を理解し、社会の構成員であることを自覚して作業療法活動を行っていかないと生き残りに苦慮するかもしれません。

 

 今回の学会では様々な立場の第一線で活躍する、幅広い視点や技術をもつ作業療法士の先生方にご講演いただきます。本学会が作業療法士として働く皆さんにとって、作業療法士としてこれからも仕事を継続していくために何が必要なのか、セラピストとしてどう進化していくのかを考えるきっかけとなれば幸いです。

 

学会長 村井 達彦