学会長挨拶

 

「作業療法の探求と発信~人と地域の生活を支える作業療法~」

 

少子高齢化が止まらない状況の今、私たち作業療法士は何ができるでしょうか?

人手不足、財源不足で医療や年金、介護などの社会保障が揺らぐ中、必要のないサービス、効果があるといえないものは保険の対象外になっていくことも想定されます。一方、ロボット化が難しい職業として作業療法士が挙げられているとの報告もあります。AIが進化していく中、本当に、人だからこそできる仕事として、生き残っていけるのでしょうか。

 筆者は、作業療法士となって33年目となりますが、新人だった当初から今でも付きまとうのは、「私のやっているこの仕事は本当に役に立っているのだろうか?」「お金を頂くに値する仕事ができているのだろうか?」という思いです。飲食店にしても、美容師にしても成果が見えやすく、そこに見合ったお金が支払われます。保険で守られている私たちの仕事は、ありがたいことに13割負担で利用して頂けています。しかし、もし、保険適応外になって、全額自己負担だとしたら、それに見合った成果を示していけるのでしょうか?作業療法の仕事はこの先大丈夫だろうか?という想いにかられるのは私だけでしょうか。

 筆者は、ご縁が合って、生活行為向上マネジメントの研究事業に参加させて頂き、その後、群馬県作業療法士会の生活行為向上マネジメント推進委員として関わらせて頂いております。生活行為向上マネジメントは、作業療法を見える化し、誰でも取り組めるものとして日本作業療法士協会が開発し厚労省に認められているものです。「作業療法を見える化する」、これをうまく活用していけば、前述した私の悩みは解決でき、対象者やそれを取り巻く人々に作業療法を知ってもらえます。また、これを使うことで、作業療法士のマネジメント力、発信力が高められる、その思いで、推進委員を継続させて頂いております。このような私が学会長を務めるのだから、「生活行為向上マネジメント」をそのままテーマにしようかと考えましたが、今回基調講演をして下さる谷川先生に相談させて頂いたところ、もっと幅広いテーマがよいのではないかとの助言を頂き、3役で話し合った結果、生活行為向上マネジメントの意味も含みつつ、作業療法を幅広く探求して発信していく学会として「作業療法の探求と発信~人と地域の生活を支える作業療法~」というテーマに決定致しました。

当学会では、作業療法士が生活行為向上マネジメントをもっと身近に感じてもらうためのプログラムとして、日本作業療法士協会の生活行為向上マネジメントプロジェクトリーダーを長年務めていらっしゃった谷川真澄先生による基調講演、領域ごとのワークショップを予定しております。また、特別講演では、COPMやAMPSを日本に広め、作業療法の発展にご尽力されている吉川ひろみ先生に作業療法の本質的なことについてお話頂きます。公開講座では、訪問リハと訪問美容を手掛けている、群馬県出身の上原孝行先生に「装うことと生活行為向上」というテーマでお話し頂きます。いずれの先生方も、私の勝手な思いつきの依頼に、即、快諾して頂き、大変感謝しております。今回、初めて、ビエント高崎というサテライト会場をお借りし、会員の情報交換の場の設置、ブースの募集という試み、並びに、ポスターの絵の募集を行いました。作業療法士だけでなく、学生や、作業療法を受けている方、更に、他職種の方にも参加していただき、活気ある学会になることを願っております。

 

最後に、当学会の開催にあたり、会場を提供して下さった群馬パース大学の皆様を初め、多くの皆様のご協力、ご支援を賜りましたことに心から感謝申し上げますと共に、一人でも多くの方に役立つ学会となることを願って開催のご挨拶とさせて頂きます。

 

 

 

 

25回群馬県作業療法学会

 

学会長 佐藤由子

介護老人保健施設 うららく